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Column
コラム

連載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX戦略講座

第5回:「DX投資」について

 

資源循環システムズ株式会社

マネージャー 金田 栄

「DX投資」とは、デジタル技術の活用により、経営変革を行うために必要となる費用のことである。企業が経営変革を行うためには、一時的な投資が不可欠であり、その際には、コストとビジネスに与えるプラスのインパクトのバランスを勘案しなければならない。DX投資は、デジタル時代における企業の競争力を左右する大きな要因となっており、効果的なITシステム・IT人材の導入に加え、その導入効果を明確にするなど、定量的かつ適切に投資判断を行うべきである。

一方、リサイクルビジネスにおいては、予算不足を理由にDX投資をためらう傾向が見られる。無論、AI・IoTなど最先端のテクノロジーを活用しつつ、組織成長に導くデジタル人材の確保や、老朽化した基幹システムの更新等を一度に達成するには、大規模な予算の裏付けを持ったトップの戦略が求められる。ただし、DXの本質は経営改革そのものであり、大規模IT投資自体が目的とはなり得ないとの旨に留意する必要がある。すなわち、DX投資においては、経営改革の進捗と足並みを揃えた目的意識の明確化、その前提となるIT投資並びに人材確保を暫時進めていくことが現実的と言える。

具体的には、個社単位の経営課題を踏まえたSaaSによる汎用アプリケーションやRPA導入など、比較的簡単に実行できる取組から始めることも可能である。重要なことは投資する金額の大小にかかわらず、その企業にとってコストを上回る効果が認められる有効な投資となるか否かに尽きる。その際、経営者や担当者レベルの自己満足に終わることなく、社内課題の解決に直結する投資となったとの幅広い認識を獲得することも重要となる。

DX投資に対する社内的な理解を得るためには、何よりも成功体験を共有することが必須となる。そのため、例えば「スモールスタート」と呼ばれる社内システムのクラウド移行、RPAソフト購入やOCR活用による事務効率改善を実現するなど、社員への稼働負荷削減等、成果の実感を得やすい取組から始めることも有効ではないか。その実感は、必ずしも定量データ化できるものではないため、定性的な社員からの評価の声なども拾い上げるべきであろう。

最後に、DX投資は、目的に応じてその位置づけを区分することができる。一つ目は、攻めのDXに資する「新たな価値を創出する戦略的な投資」(以下、「バリュー・アップ」)、もう一つは守りのDXのための「IT関連費用の大半が現行ビジネスの運用・維持」(以下、「ラン・ザ・ビジネス」)である。すなわち、バリュー・アップにより、新たな市場に挑戦することで売上高を拡大することと、ラン・ザ・ビジネスにより既存業務の最適化を通じた業務効率改善とコスト削減を両立することの力点配分こそが、DX投資の肝となるのだ。

経済産業省のDXレポートでは、それぞれの比率が現状として「2:8」であり、今後は「4:6」まで変革していくべきとの指摘もある。 ただし、業種や業態、会社の規模や既存人材などリサイクルビジネスの個社を取り巻く環境は様々である。自社の持続可能性と成長をテーマに全社的な意識統一を図りつつ、トップダウンで最終的決断を行うこと、それこそがDX投資に挑む上での姿勢と言えよう。

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