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Column
コラム

掲載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX講座

第10回:「開発手法」について

資源循環システムズ株式会社

マネージャー 金田 栄

企業が大きく変革するには、既存の価値観や企業文化をアップデートして新規事業を創出する「攻めのDX」が必要不可欠である。その実現には、デリバリーに至るまでのスピードが不可欠であり、要件定義等に多くの時間を費やしている間にもビジネスチャンスを逃しかねない。したがって、顧客ニーズを優先し、より良いプロダクトを短期間で効率的に開発する「アジャイル開発」が適していると考えられる。

従来、大規模システム開発においては、ウォーターフォール開発が採用されていたが、近年では、このような観点からアジャイル開発を採用する企業が増えてきている。大規模システム開発の場合は開発体制も大きくなるため、アジャイル開発では複数のチームを編成し、同時に複数の開発を走らせる。そこで導入すべき開発手法が、「スクラム開発」である。

スクラム開発では、各メンバーへ臨機応変にタスクが割り振られ、メンバー全員が全てのタスクを実施するポジションにおかれる。これにより、各メンバーは、全てのスキルを獲得しようとする姿勢を持ちながらも、一定期間部分的なシステム開発に集中することができる。さらに、他メンバーに対しての自身の専門分野のレクチャーや、他メンバーの専門分野を学ぶことで有能な人材の育成につながることに加え、必要に応じて小規模チームを複数作る体制を整備することで統合的な大規模システム開発を実現させることができる。

また、状況に応じて、メンバー全員がプロジェクトマネージャー相当の役割を担い、責任を持ってプロジェクトに取り組むことも可能であり、進捗管理やマネジメントなど、様々な役割を経験することで属人的な業務を減らしながら、個人レベルのスキルアップを期待できる。

さらに、メンバー全員がタスクレベルのオーナーシップを持つとともに、事業部門と開発部門などが一体となってプロジェクト進め、部門間の引き渡しや、社内での度重なる承認といったプロセスを排除することで開発スピードを格段にアップさせ、先行してリリースしたプロダクトの品質を高めながら、結果的にシステム全体のリリーススケジュールを前倒しするのである。

デザイン作成やプログラム作成などのタスクの役割を予め細かく割り振った上で開始する従来のウォーターフォール型開発との大きな違いは、タスクレベルで各メンバーの役割が明確化されていないことであり、システム全体の責任を担うアーキテクトの役割は、正に指揮者のように個別タスクの調整と統合を図ることに尽きる。

ただし、現場がスクラム開発を採用しても、経営側の意識がプロジェクトの各工程で承認を求め、現場へ権限を委譲しないなどのウォーターフォール型のままでは機能しない。DXに成功する企業に求められる条件は、官僚的な企業風土を取り払うことで、リーダー自身がウォーターフォール型プロセスを改善する意志を示すことにある。

さらに、社内におけるリーダーの評価基準を、どれだけスクラム開発等の成果を挙げたか等で評価するシステムに変革する必要もある。短期間での成果が求められる「攻めのDX」成功のカギは、経営層側からの徹底的なサポートの下で、効率的なスクラム開発を進めることにある。

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