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Column
コラム

連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第11回: トップダウンアプローチとボトムアップアプローチ

資源循環システムズ株式会社

石田 翔一

 

現場を巻き込みDXを推進するためには、経営トップのコミットメントによるトップダウンアプローチは必要不可欠であるが、これだけでは不十分であり、事業部門の担当者を巻き込んだ現場発のボトムアップアプローチも必要である。DXの全社方針の元に変革を実践するのは各事業部門であり、経営トップが本気でも、現場が自分事にしないとDXは進まない。経営者においても、本当に現場が求めているものや直面している課題など、現場の声に真摯に向き合うことが大切である。企業全体としてDXを進めるためには、トップダウン型の変革とボトムアップ型の変革の両輪のバランスを見ながら推進することが重要である。

トップダウン型の変革を「戦略的イノベーション」、ボトムアップ型の変革を「現場型イノベーション」と捉えると、「戦略的イノベーション」では、経営者層が描く将来像とそこに至るまでのロードマップに基づいてDXを推進していく。現場から次々と湧き上がるように起こるイノベーションを戦略的に導き、全体最適となるようバランスを取るのが「戦略イノベーション」の狙いとなる。ただし、この「戦略的イノベーション」だけで法人全体のDXを推進できるかと問われれば、必ずしもそうではない。そこに現場のニーズが十分に反映されているとは限らない。そこで必要となるのが、現場から出たアイデアをもとに変革を起こす、「現場型イノベーション」である。

トップダウン型とボトムアップ型を両立させるのに重要な役割を果たすのが、経営層と現場、現場と現場をつなぐハブ機能である「DX推進部門」である。「DX推進部門」は常に経営戦略による全社最適を意識しつつ、現場の変革活動を支援することが求められる。一般的に、従来の組織形態であるいわゆる「トップダウン型組織」では、仕事を実行する現場と、仕事を計画する経営層が情報連携するプロセスにタイムラグが生じる。たとえば、経営層が作り込んだ経営計画は、一度中間管理層へ周知され、それをもとにした現場への指示により実行されることが一般的である。また、反対に現場から情報が経営層に届くまでには、段階的に上長の承認フローを経由することになる。つまり、計画・決裁から実行までに時間を要し、その間に起こった市場や顧客ニーズの変化に対応しにくいのが「トップダウン型組織」のデメリットである。

ボトムアップ型のアプローチの効果を発揮するには、意思決定と実践、試行錯誤のサイクルを現場部門で迅速に進めることが望ましい。例えば、とある物流部門では、「構想を描いてからシステムを構築するのではなく、『実際に動くアプリケーション』=実作業を想定したプロトタイプを用いることで、作業がどう変わるのかを素早くイメージした」というスピーディーな業務改革例が生まれている。業務現場の課題は直ちに解消されることが望まれており、実作業の担当者に解決策のプロトタイプを試してもらい、現場のリアルな意見を吸い上げながらボトムアップ型で仮説検証サイクルを回すことが重要である。

DXは一度大規模な改革をしたからといってそれで完了するものではない。現場の状況はめまぐるしく変化するため、DX後の仕組みの中で得られるデータに基づいた改善活動を継続することが不可欠だ。そのためにはトップダウンとボトムアップの両立を目指してほしい。

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