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Column
コラム

掲載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX講座

第9回:「ベンダーとのコミュニケーション」について

資源循環システムズ株式会社

マネージャー 小野寺 陽

 

近年、システム開発の失敗が業種・業界を問わず多く発生している。失敗の理由は様々あるが、失敗の原因の1つに「ベンダー(IT製品やサービスを販売する業者)とのコミュニケーション不足」が挙げられる。レガシーシステム刷新や新たなアプリケーション導入などが求められるDX推進に当たっては、ベンダー選定こそが重要な要素であり、DX推進におけるシステム開発の「目的」や「要求」をベンダー側に確実に理解してもらうためにも、発注者であるユーザー側は的確に既存情報やニーズを伝えなければならない。

ベンダーとユーザーが属する業界が異なり、企業文化も異なっている中で、DX推進に資するシステム開発を成功させるには、密なコミュニケーションの積み重ねが必須である。双方が理解・納得するまでシステム要求を具体化した上で、ユーザーが主体的にプロジェクト進行を担い、信頼されるベンダーが伴走することが成功の要件となる。

では、実際の現場ではどのようにベンダーとコミュニケーションを重ねながらシステム開発を進めていくべきか、その実践に当たり押さえるべきポイントを以下に整理する。

1つ目が、ベンダー、ユーザーともに、双方が保有する業務や背景知識、更には言葉の定義が異なることを前提に、丁寧なコミュニケーションを重ねることである。一方は知っているつもりの常識的な知識が、受け止め側には伝わらない事象は必ず生まれる。例えば、制度的な背景等を踏まえたユーザーの常識は、ベンダーからするとこれまで付き合ってきた業界の常識と異なるため、ベンダー側がユーザーの要求を十分にくみ取ることができない事例は後を絶たない。結果、ベンダー側の判断と作業が的外れな方向に進むことで、後のプロセスにおける齟齬や無駄な手戻りの原因となるのである。

2つ目がシステム開発の目的や最低限の要求仕様を予め明確化することである。システム開発の責任者があくまでユーザーであり、ベンダー側はその枠組みの中でしか業務フローに関わる仕様書の具体化を行うことができない。まずはユーザー側が、社内全体でシステム開発に係る意志とトップを巻き込んだかたちで書面レベルまで要求仕様を落とし込み、専門用語や技術的な用語は避けながらも、誤解が生まれないように双方が一意でしかとらえることが出来ない言葉で説明する体制整備が必須となる。

 最後に中長期的なパートナーシップの構築である。ユーザーは、業務理解に不明な点が発生するたびにベンダー側から個別の問い合わせがくるはず、との認識を持つことは望ましくない。双方が対等な意志共有やすり合わせの場を設けつつ、業務上不明な点があれば気軽に相談できる人間関係を構築するなど、ベンダー側にとっても歩み寄りやすい関係性を構築しなければならない。

コミュニケーション不足の中では、要件定義(システム開発をする上で実装する範囲や内容の決定)で誤解や認識齟齬が生まれ、やがてプロジェクト全体の進捗に悪影響を及ぼすことで、カットオーバーまでの期間延長やコスト増大という事業リスクが拡大する。そして、本来のシステム開発目的と大きな乖離が発生し、双方でゴールの認識が合わないままプロジェクトが進んでしまうことで、最悪訴訟問題にまで発展する可能性も否定できない。

失敗を未然に防ぎ、円滑なシステム開発を行うためにはベンダー側が目的や、要求を理解し、共通認識を持つことが大前提である。失敗のリスクを下げる上で、スタートアップ時の開発規模を小さくすることも有効であろう。核となる案件を定め、関わる人数や開発規模が小さい段階で責任者や担当者同士の信頼関係を確保した上で、部署や部門間で実施・検証しながら徐々に規模を大きくしていくというアプローチも有効と考えられる。

 

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