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Column
コラム

掲載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX講座

第8回:「情報の信頼性確保」について

 

資源循環システムズ株式会社

マネージャー 小野寺 陽

「グリーンウォッシュ」と呼ばれる環境偽装した商品やサービスが、動静脈産業問わず、社会的な課題となっている。環境に配慮したと謳う素材や部品を商品に使用したとしても、その裏付けとなる情報が客観的に担保されなければ、新たな付加価値にはなりえない。リサイクルビジネスにおいては、廃棄物の発生から処分に至るマニフェスト情報の管理が行われているが、今後、本格的なサーキュラー・エコノミーの実現を視野に入れると更なる課題が見えてくる。例えば、再生材の発生源情報、製造履歴情報、含有物質情報等である。こうした履歴の管理を行うためのツールこそがトレーサビリティであり、その導入の重要性はかつてなく高まっている。

既存のマニュフェスト情報管理は、制度的な裏付けに則って実践されている。廃棄物処理法により、収集運搬や中間処理、最終処分といった一連の流れについて、排出事業者が責任を持つことが義務付けられているからである。ただし、紙媒体の活用は、不要な手間やコストの増大、煩雑な情報管理プロセスが求められるからこそ、導入されたのがJWNETである。JWNETは、業界で最も幅広く普及したトレーサビリティシステムであるが、その汎用性は低い。なぜなら、制度的な裏付けを前提にした行政報告システムであり、開示対象が行政機関だからこそ民間事業者が取引情報等の開示を行っており、ビッグデータとしての民間活用は不可能だからである。

ただし、再生材等の有価取引において、マニフェスト情報管理は、そもそも求められていない。特に動静脈連携がカギを握るサーキュラー・エコノミーにおいては、再生材等の高度利用を目的とした発生源や含有物質などの履歴管理が必須となり、高度資源循環はその前提の上に成立し得るためである。いうまでもなく、詳細情報の管理や共有において、情報システムの活用は不可欠であり、新たなトレーサビリティシステムの導入が求められている。ここで課題となるのが、民間事業者による情報管理のスコープである。当然ながら、同業他社に対して自社の取引情報等は機密であり、行政機関以外の第三者に開示することは受け入れられない。だからこそ、情報の信頼性確保を実現するための新たなトレーサビリティの在り方を確立する必要があるのだ。

現時点で活用可能なツールの一つが、ブロックチェーン技術である。ブロックチェーン技術では、1つのデータベースに全ての関係者の情報を集約するのではない。台帳と呼ばれる各データ拠点(ノード)にて情報の分散管理を行いつつ、データ入力や参照にかかるアクセス制限を行うことで、中央集権的で越境的なデータにアクセスすることが可能な者が、実質的に不在のまま、運用できる仕組みとなっている。更に、データ改ざんの困難性を伴うことで、情報の信頼性も極めて高い。

ブロックチェーン技術の導入を通じて、原材料から製品の製造・販売・使用、およびその後の回収から解体・破砕を経てリサイクル原料となり再び製品製造に循環利用されるまでの、資源循環リサイクルにおけるトレーサビリティ管理も現実的な課題となり得る。リサイクル原料の製造工程や検査工程における物性情報や品質情報等の可視化は、新たな製品開発における「攻めのDX」にも貢献し得るであろう。こうしてみると、トレーサビリティ管理の徹底はリサイクルビジネスが新たな地平を切り開く上での一里塚になり得る。ブロックチェーン技術は、その実現を担う極めて有効なテクノロジーであるのだ。

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