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Column
コラム

掲載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX講座

第10回:「顧客起点のビジネス変革」について

資源循環システムズ株式会社

取締役 瀧屋 直樹

DXの最終的なゴールは「変化する顧客や環境に対応し、事業モデルを変革すること」、更には「社会や顧客へ新たな価値を提供し、収益を創造すること」であり、そのための「事業モデルの変革」に欠かせないキーワードが「顧客起点」である。

 「顧客起点」とは、自社製品やサービスありきで事業を考えるのではなく、顧客の視点から全ての物事を検討するという考え方である。「顧客の課題(困り事)は何なのか」を徹底的に考え抜いた上で、その解決のために何をするのかを具体化するのが、事業コンセプトを作るシナリオになる。予め、顧客となり得る排出事業者のビジネスが求める廃棄物処理・資源循環に対する課題やニーズは何かを徹底して考えることが有効であろう。

ではどのように顧客起点でビジネス変革を進めるべきか。ゼロベースから市場調査、サービス企画を行うスタートアップ企業とは異なり、既存企業には既存顧客基盤という活かすべきアセットがある。「顧客資産を基点に事業を拡張し、イノベーションを起こす」、つまり「顧客起点のビジネストランスフォーメーション」という方法論が相対的にDXを担う既存企業の変革にはマッチしている。

DX関連製品・サービス提供側の事業モデル再定義には、「アンゾフの成長マトリクス」というマーケティングフレームワークが有用である。アンゾフの成長マトリクスでは、分析軸として「製品・サービス」と「市場・顧客」の2軸に分け、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分け4つのセクションにおける成長戦略を検討する。その際には顧客起点の課題・ニーズ分析が肝となる。左下の「既存顧客×既存サービス」を左上「新規顧客×既存サービス」や右下「既存顧客×新規サービス」に発展させる事業戦略への取り組みを進めることが、既存アセットを生かした競争力創出につながる。

「新規顧客×既存サービス」では、既存自社サービスの「新市場開拓戦略」に取り組む。実践例としては、「Eコマースによる発注のデジタル化」が考えられる。新規顧客獲得には従来とは異なる量・質の顧客接点を生み出す必要があり、これにはウェブ上で排出事業者が新規に廃棄物処理委託の問合せや見積、契約依頼が可能となる顧客の発注デジタル化による新たな販売チャネル構築等が有効である。

「既存顧客×新規サービス」では、既存顧客に対する「新サービス開発戦略」に取り組む。実践例としては、「廃棄物一元管理サービス」の提供が考えられる。既存顧客の排出する廃棄物全体の管理に係るアウトソーシングサービス提供と、実績情報・トレーサビリティ情報可視化により顧客排出事業者の確実で手間のないコンプライアンス遵守の実現、更なるリサイクル実現提案も有望であろう。この際重要なのは、サービスありきで事業化するのではなく、既存顧客のうち誰にどのような課題・ニーズがあり、新規サービスによってどのように解決をするのかについて実際に顧客の声を聞き、顧客分析とサービス企画を行うことに尽きる。

 動脈企業がサーキュラーエコノミーへの転換を画策し、課題・ニーズが目まぐるしく変化している中、静脈企業が漫然と事業戦略のない既存事業を続けていても企業成長は望めない。DXサポートを行う側の企業こそ、顧客の声に寄り添いつつ、自社製品やサービスの提供価値を見直すことが成長の鍵を握っている。

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