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Column
コラム

連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第8回: 効率的な熱供給による地域単位の「分散型社会」実現

資源循環システムズ株式会社

マネージャー 金田 栄

近年、国内では自然災害が頻発しており、災害発生時のレジリエンス強化の観点や、脱炭素社会に向けて2050年にCO2を排出実質ゼロにすることを目指すゼロカーボンシティなどの急速な拡大により、地域における再生可能エネルギー等の自立・分散型エネルギーを確保する「分散型社会」実現に対するニーズが高まっている。

本稿では、分散型社会の実現のための具体策として、「地域熱需給マッチング」構築を提案する。

脱炭素社会の実現には、日本の最終エネルギー消費の約7割を占める熱利用分野における再生可能エネルギー熱の普及拡大が不可欠だが、温暖化対策としても再生可能エネルギーの熱利用に対する関心は不十分な状況にある。

国内の焼却施設には、バイオマス発電施設としての期待が高まっているが、廃棄物を焼却することで回収できるエネルギーのうち電力に変換できているのは約20%に過ぎずロスが大きい。そのため、回収したエネルギーを如何に効率的に利用するか、「脱炭素化」に資するエネルギー効率という観点から言えば「熱を熱のまま利用する」という視点が重要となる。

焼却施設で廃棄物を焼却することで発生した蒸気を自家発電には利用せず、高温蒸気を使う近隣の工場等へ供給することにより、工場等で蒸気を発生させるために使用していた化石燃料の削減につながり、温室効果ガス削減や、地域産業競争力の向上につながると考えられる。

蒸気供給は、系統供給によるバックアップが前提となる電力とは異なり、需要側と供給側が「1対1」の体制の場合、需要側の要望に応じた安定的な供給は困難である。したがって複数の供給者が、発電所や温水ボイラー、蓄熱施設等の整備を前提に、複数の需要家に対する供給を可能にする仕組み作りが望ましい。

その前提となるのが、地域単位で整備する地域熱需給マッチングであり、それには、施設毎に熱供給量の変動と熱需要をリアルタイムで把握するためのIoTセンサー等の導入が必要となる。IoTの活用により、熱発生源側の熱需要データと産業地域側の供給データを収集・分析し、ビッグデータとして蓄積することにより、必要なときに必要な分の供給を可能とするなどのエリア全体における熱供給の最適化が実現できる。

令和2年12月、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団の主導により、産官学連携による「自立・分散型エネルギー研究会」が設立された。産官学の緊密な連携の下、廃棄物を資源とする自立・分散型エネルギーの推進策についての検討を行うこととしており、地域の産業廃棄物等を合理的に処理する廃棄物資源化構想が検討されるなど、焼却熱の有効活用に対する期待も高まりつつある。

その実現にも資する取り組みの一つとして、国としても熱需給マッチング等の取り組みを積極的に進めていくことが期待されている。

 

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