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Column
コラム

連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第7回: 「循環経済」への転換を見据えた選別・保管施設の変革

資源循環システムズ株式会社

石田 翔一

2020年12月に経済産業省が各関係省庁と連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、資源循環関連産業も重要分野として盛り込まれている。そこには、2050年までに「循環経済」への移行を進めるとの記載もあり、その重要性が窺える。「循環経済」の推進においては、動静脈連携の重要性に加え、動脈産業と比較すると遅れている静脈産業側の技術変革も必要不可欠である。

本稿では、静脈産業に欠かせないプロセスである「選別・保管」に着目し、「循環経済」推進に向けた変革の具体策として、従来の労働集約型の選別工程における人工知能(AI)活用により、高度な機械化・自動化を実現する「次世代型ソーティングセンター」(以下、「ソーティングセンター」という)を提案する。

昨今の労働力人口の減少により、リサイクル施設で手選別を行う人材確保が困難になっている中、コロナ禍による人的接触や業務範囲の制限がさらに手選別作業の継続性悪化に拍車をかけている。ポストコロナを考慮した中長期的観点で見ると、積替え保管施設や中間処理施設における選別業務は、機械化を伴う自動化を視野に入れざるを得ないだろう。選別工程の機械化・自動化においては、AI導入が必須と言える。「第三次AIブーム」とも呼ばれる現状で急速拡大している新規AIシステムと従来型システムとの最大の違いは、ディープラーニングと呼ばれる機械学習の導入にある。コンピュータを人間の脳と同じような構造にすることで複雑な問題にも対応できるのではないかという仮説に基づいて学習ロジックを階層化することにより、例えば画像解析とロボット導入が可能となっているのである。

選別の自動化プロセスにおいて、画像解析技術が必要不可欠となる。例えば、ロボット選別を通じて回収した廃棄物を原料・燃料として素材別に選別するため、あるいはピットの中に投入された廃棄物のカロリーの安定化を図るためには、画像解析による「作業プロトコル」や「操作コマンド」の最適化が求められる。この技術の汎用的な活用により、従来型のシステムが「目」という機能を持つに至ったと言っても過言でない。

こうした要求を満たすソーティングセンターの実現に向けて課題となるのは、ロボット導入等のコストとAIの精度のバランスである。静脈産業は動脈産業と比較すると、規模の小さい事業者が多く、単独事業者が地域毎に個別導入するのは困難である。また、次世代型ソーティングセンターのスケールメリットは、AIによる学習の範囲を拡大しつつ、一般廃棄物や産業廃棄物の制度的な区別する点にも見出せる。そのため、地域に根差している企業同士がコンソーシアムを立ち上げ、自治体と連携して大規模施設の整備を行い、各自治体の規模に応じたソーティングセンターを設置することで導入コストを抑制することが期待できる。

更に、コンソーシアムごとにロボットの設計を行い、AIの精度を高めようとする際には、コストと時間がかかる。国内外のベンダーの技術連携を通じて、ロボット選別現場作業で蓄積された画像情報を画像アルゴリズムとして一般化した上で、その情報自体を商品やサービスとして提供するビジネスモデルを確立する事業者が出現すれば、コンソーシアムごとの施設における選別精度を高めることができる。

無論、機械的な目線で見れば我が国独特の一般廃棄物と産業廃棄物の区分は意味を持たず、「自区内処理の原則」という従来からの発想自体が障害となり得る。今こそ、官民連携を通じた制度的改善を伴うソーティングセンターの具体化と創出を急ぐべきではないか。

 

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