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Column
コラム

連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第6回: AI自動配車による「脱炭素化」

資源循環システムズ株式会社

取締役 瀧屋 直樹

先般、環境省が公表した令和4年度概算要求では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策の柱として「脱炭素社会」、「循環経済」、「分散型社会」への“3つの移行”の推進が掲げられ、「今までの延長線上ではない社会全体の行動変容」が課題に挙げられている。リサイクルビジネスがDXに取り組むことで挑戦すべきGXの方向性は、「脱炭素化・循環経済・分散型社会」であることは、本連載初回にも提起しており、社会的要請を鑑みても明らかであろう。今回、リサイクルビジネスにおける「脱炭素化」の具体策として、「AI自動配車」の重要性を提起する。

収集運搬業務における「脱炭素化」には、既に進められている高効率運搬車両の導入のみならず、収集運搬ルートの効率化の重要性も大きい。業界全体を見て個社の配車担当者が保有するノウハウは暗黙知に依存する部分が大きく、形式知化を図らなければデジタル技術を活用した最適な配車体制を確保すること自体が困難になりつつある。こうした中、「脱炭素化」の実現に資するGXの一手法として、「AI自動配車」の実現が有効である。

「AI自動配車」による収集運搬効率化には、二つの要素を確立する必要がある。ひとつは、廃棄物等の排出情報の見える化である。現状、排出現場に何がどれだけ蓄積されているかが正確に把握されていないため、集荷時の排出量が見込みより多いことによる積み残しや急な増車対応、逆に見込みより少ないことによる非効率な積載状況等が生じている。収集運搬を効率化する上で、まずは、排出状況に関するインプットデータを正確に把握する必要がある。廃棄物の排出情報を把握する手段としては、排出場所への計量器やセンサー、カメラ等の設置と、これらとIoTで情報プラットフォームとのデータ連携によるリアルタイムな状況把握が必要となる。また収集頻度が多い現場では、過去の排出情報と、気温・降水量等の気象データ等を組み合わせ、AIを活用した発生予測モデルを構築することも有効となろう。

二つ目は、AIアルゴリズム解析による収集運搬ルートの最適化である。ほとんどの収運業者では、ルート設定は熟練職員の経験則をベースに日毎行われている。このため、当該職員の病欠等による業務継続性が課題となり、退職に伴うノウハウ継承の問題、手作業の業務負荷の課題が顕在化しつつある。「AI自動配車」には、経験則でなくデータを基に確立したアルゴリズム解析を用いる上で、リアルタイムに把握された排出情報に加え、交通状況、車両毎の最大積載量や積載可能物等の諸データをインプットすることにより、最適な収集運搬ルートを算出することが期待される。例えば従来が配車拠点と収集拠点を単に往復する「ピストン回収」だった顧客を対象に複数拠点を巡回する「ルート回収」への組み換えを提案することや、翌日収集への切り替え等も可能になる。さらには一連の配車業務をデジタル化することで、手作業で行っていた日報作成やシフト管理等も効率化することができる。

「AI自動配車」は収集運搬業務の「脱炭素化」に向けた切り札になると言って過言ではない。その効果を最大化させるには、静脈業界全体としての努力も不可欠となろう。都市部等では、一つのテナントビルに対して、テナント毎に複数の収集運搬業者が入り込むなど複雑化している。一方の動脈業界では、企業間連携による連携輸送が進みつつある。静脈業界においても、「AI自動配車」と同時に業界連携による効率化という変革へのチャレンジが求められているのである。

 

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