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Column
コラム

DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第5回:「攻めのDX」が促す生産性向上

資源循環システムズ株式会社

代表取締役社長 林 孝昌

「攻めのDX」がもたらす最大の効能は、生産性向上である。新規事業を生み出しながら売上を増やしつつ、その事業効率性を高めることで自社競争力の強化を促す。

例えば収集運搬段階において、発生源における対象貨物の容積や重量をセンシングで把握しつつ、自社車両の運行履歴管理を徹底出来れば、AI等を活用した収集ルートの見直しをきっかけにした効率化が実現可能となる。また、中間処理施設に搬入される貨物の組成・性状等を予め把握出来れば、ロボット選別の導入や遠隔制御による効率的な焼却等も可能になるであろう。無論、処理施設内の作業員の業務従事内容の把握も、作業プロセスの高度化や労働安全管理の徹底という観点からのメリットを生み出し得る。

もう一つの重要な視点は、トレーサビリティ管理の徹底による川上・川下の事業者への情報提供実施とそれに伴う動静脈連携実現の必要性である。スコープ3の考え方に則ったCO2排出量削減や適正処理に伴うリサイクル率向上が求められている排出事業者は、裏付けのある定量情報のフィードバックを求める可能性が高い。川下に販売するリサイクル製品についても、排出時点からの原料・含有物質データを事前に把握することが、再生資源を利用するメーカー等の要望に応じたスペック確保の前提条件になる。その実現に求められるのが製品ライフサイクルを通じた履歴の電子化、すなわちトレーサビリティ管理なのである。

ただし、ここで重要となるのが個社レベルの守秘情報管理と情報連携のバランスである。廃棄物処理やリサイクルの担い手や自社で利用している再生資源の由来物について、積極的に開示する事業者は限定的である。クライアント側が望むのは裏付けのある正確なデータのみであり、そのプロセスは自社ノウハウと秘匿しつつ個社レベルのリスクとして管理したいというのが本音であろう。

だからこそ、クラウド化を通じた民間主導の資源循環プラットフォーム整備が求められる。幅広いクライアントの情報を一括管理しつつ、必要とする対象者のみに必要な内容を適宜提供することが可能な体制整備が、リサイクルビジネスに求められている。データ容量の変動やアクセス制限、柔軟な課金等への対応を可能とするクラウド化推進は極めて有効な手段であり、高度なセキュリティ管理を行える外部システム会社等との連携により、自社システムをオープン化することが情報管理の高度化を実現する近道となる。

更に、中長期的な処理実績の解析や他社との連携等も視野に入れつつ、地域別のデータ整備や一般的なアルゴリズム解析を行なうことが出来れば、新たな付加価値を創造することも可能になるのだ。

おそらく、こうした生産性向上に資する民間主導資源循環プラットフォームの担い手としては、大手リサイクルビジネスやコンソーシアム事業体が先行することになるであろう。そのシナリオが具体化出来た時にこそ、廃棄物処理分野の「データ主導型ビジネス化」への扉が開かれるはずである。

 

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