本文までスキップする

Column
コラム

連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第9回: DXの目的とデジタル化推進のステップ

資源循環システムズ株式会社

代表取締役社長 林 孝昌

DXで先行する他社事例等を踏まえて、その重要性や威力を認識する業界関係者は増えている。それでも、経営レベルで、「当社はどこから手を付けるべきなのか?」という素朴な疑問を前に踏み出せなかったり、「的外れなデジタル化」を目指したりする事例も見られる。

一般論として、リサイクルビジネスにとってのDX化は、その本来ミッションであるグリーントランスフォーメーション(GX)を通じた環境負荷低減や資源有効利用促進を目的に据えるべきである。DX導入は事業効率とデータ活用がもたらす未来の企業像を念頭に置いて進めるべきであり、デジタル化自体が目的ではない。

本稿ではリサイクルビジネスによるデジタル化推進について、そのステップ毎に整理を行なう。

DX推進の大前提は事業活動に係る情報のデジタル化であり、「デジタイゼーション」と呼ばれる。紙で管理している情報をデジタルデータに置き換えるという意味では、電子マニフェスト導入がその典型的な事例である。ただし、デジタル化したデータを自ら加工して分析・利用するためには、デジタルデータを統一的なフォーマットに落し込み、自社内で統計処理やデータ連係が出来る基盤を整備する必要がある。表計算ソフトのカラムに文字データを打ち込んでも、デジタル化とは呼べないのだ。入力済みの情報をデータベース上で管理可能にすることが、デジタイゼーションのゴールである。

次のステップは、デジタル化した情報を基に業務プロセスそのものを変革する「デジタライゼーション」である。電子化されたマニフェスト情報を契約書と自動突合して、契約上の品目や計量伝票とのチェックを行いつつ、最終的な請求書発行までを一気通貫で行なうシステムを構築すること、などが該当する。従来は個別に行なっていた業務を効率化して、ムダムラやヒューマンエラーをなくすことが出来れば、企業の生産性は向上する。また、一定のセキュリティ管理を前提に、データ改ざん等が不可能となるため、いわゆるITガバナンス強化にも資する取組みにもなる。業務プロセス改善を前提とした効率化の徹底並びに管理対象とするデータの信頼性確保、これがデジタライゼーションのゴールと言えよう。

その上で、デジタル化における最後のステップこそが、「デジタルトランスフォーメーション」である。デジタライゼーションを基盤インフラとしてこそ、組織横断的な業務・製造プロセスのデジタル化や顧客起点の価値創出のためのビジネスモデルの変革に挑戦出来る。例えば顧客別の取引実績を検証した上で各社ニーズを具体化して、営業人材が得た情報と組み合わせることで提案型営業への転換が可能となり得る。更には品目別定量情報等から潜在的なニーズをくみ上げれば、新たな設備投資の方向性も見えてくる。デジタルトランスフォーメーションのゴールは、GXを担う個社事業全体の目的変革や改善に向けた投資そのものなのである。

国内各社による変革の方向性がGXに向かえば、その時にこそ本当のサーキュラーエコノミーの姿が見えてくるであろう。

 

連載記事ダウンロードはこちらをクリックしてください。

この記事をシェアする