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Column
コラム

連載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX戦略講座

第2回:「ガバナンス」について

資源循環システムズ株式会社

取締役 瀧屋 直樹

 

「コーポレートガバナンス(企業統治)」とは「株主をはじめ顧客や従業員、地域社会などの立場を踏まえたうえで、透明公正かつ迅速果断な意思決定を下すための仕組み」であり、企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目的として取り組まれているが、一般的には企業の不正行為防止と収益力強化の2点が連想される。

従来の「ITガバナンス」は、コーポレートガバナンスを確立するためにITの力を活用する、つまり情報システムの安定稼働のためのリスク管理が中心だった。しかし、単なるIT活用ではなく、企業変革を目指すDXにおいては、ガバナンス自体も従来のITガバナンス(守り)から、デジタル活用による「価値創出」を最大化するための「デジタルガバナンス」(攻め)にシフトする必要がある。

デジタルガバナンスとは、「DXを継続的かつ柔軟に実現することができるよう、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立し、常にその実態を掌握し評価をすること」(経済産業省)であり、デジタルガバナンスの確立は、企業のDX推進サイクルが持続的に定着することを意味する。情報システムの世界に閉じた取り組みに留まることなく、経営者が企業全体のデジタル変革を統制することが求められており、デジタルガバナンスの成否がDXに取り組める企業へと変革できるかどうかの大きな分かれ道となるのだ。

デジタルガバナンスの要素としては、①ビジョン・戦略、②組織・人材、③テクノロジー、④投資、⑤評価・改善の5つが挙げられる。この中でも特に重要なのは①と②である。まず何よりも、経営者自らがビジョン・戦略を語ることが強く求められる。経営者はIT システムとビジネスを一体的に捉え、新たな価値創造に向けたストーリーを描くことで、経営戦略と一体となった全社的なデジタルガバナンス・マネジメントを実現するべきである。次にビジョン・戦略を実行し、必要な変革を行うため、IT部門、DX部門、事業部門、経営企画部門などが横断的に取り組む組織体制を築くことが必須となる。デジタル戦略推進のために各人(経営層から現場まで)が主体的に動けるような役割と権限を明確化し、かつ組織の壁を越えて活動することを仕組み化するのだ。新たな変革に取り組む上で、従来通り個別組織がバラバラに動いていては、既存業務プロセスをそのまま合理化するに過ぎなくなってしまう。役割と権限の明確化においても、経営者が戦略の実行にしっかりとコミットすることは欠かせない。

DXはデータやデジタル技術を活用した経営改革・業務改革を推し進め、競争優位性を確立するために自ら変化を選択する取り組みである。課題や変化をとらえ、状況判断を行い、よりよい方向へ転換し、実行することが求められる中、過度に慎重になってしまい、事前検討や意思決定に膨大な時間を費やしてしまっては本来の目的を果たすことができない。最後はトップの決断なのである。

DXの成功のカギは、経営者の強いリーダーシップの下、デジタルガバナンスを構築するために試行錯誤を行うことにある。

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