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Column
コラム

DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第1回:「脱炭素化・循環経済・分散型社会」への挑戦

資源循環システムズ株式会社

代表取締役社長 林 孝昌

現政権が掲げる我が国経済成長に向けた命題は、「デジタル化」と「脱炭素化」である。また、小泉環境大臣は、「脱炭素化社会への移行」、「循環経済への移行」、「分散型社会への移行」という「3つの移行」を通じた、経済社会の再設計を一層強力に進めつつ、コロナと気候危機という二つの危機を、より持続可能で強靱な経済社会へのリデザインに変えていく、との発言もしている。

廃棄物処理・リサイクル業界(以下、「リサイクルビジネス」。)に関わる全ての関係者にとってはまたとない好機が訪れており、時流を見極めて積年の課題を清算しつつ、未来を見据えた業界全体の変革を図るべき時はいまである。そのためのキーワードが、「デジタル・トランスフォーメーション」(以下、「DX」。)と「グリーン・トランスフォーメーション」(以下、「GX」。)であり、それぞれリサイクルビジネスとの密接な関連が認められる。

経済産業省は、DXを「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。資源循環型社会への転換という明確なミッションがあるにも関わらず、IT化の波に乗り遅れて、旧態依然たる業界構造を打破できていないリサイクルビジネスこそが挑むべき課題といえる。

一方、GXは新しいバズワードであり、本連載では「デジタル化を通じたグリーン化に資する新たな社会経済システムへの転換」と定義する。その目指すべき方向性こそが、リサイクルビジネスとも親和性が高い「脱炭素化・循環経済・分散型社会」である。コロナ禍を経て、業界内部でのDXテクノロジー導入による新たな付加価値創出の動きは顕在化しつつあり、その前向きな実践と商用化をいかに意識的に推進できるかが問われている。

例えば収集運搬の領域では、「スマートごみ箱等活用による積載効率向上」や「AI自動配車」を通じて、収集運搬距離及びそれに伴う化石燃料利用削減を目指す先行事例が見られており、結果として脱炭素化が促進されることが期待される。

また、再資源化等を担う中間処理の領域では、リユース促進にも資する「シェアリングシステム」の採用や、高度な機械学習を伴う「ロボット選別」や「AIクレーン」等も実用段階を迎えており、リサイクルと経済の好循環が生み出されつつある。

更に、都市OSなどの利用が求められる「スーパーシティ」への参入、焼却施設の熱や電気を活用した地域単位での「自立分散型エネルギー供給」などに取り組む企業等により、まちづくりを静脈産業の目線から支える取り組みも本格化しつつある。

ここで忘れてならないのが、個別事業主体が取得した情報を効率的に連携させるためのデジタルプラットフォーム整備の重要性である。API等の情報技術とルール整備の相乗効果により、「官―民」や「民―民」での前向きな情報共有を図ることが、次代におけるリサイクルビジネスの底上げと成長を可能とするのである。無論、一般論としても、現場レベルのDX実践が社会全体のGXを加速することは間違いない。

本連載では、こうした観点から具体的なテーマを取り上げつつ、その課題と可能性等について検証していく予定である。

 

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