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Column
コラム

連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―

第2回:「攻め」と「守り」のDX

資源循環システムズ株式会社

ディレクター 瀧屋 直樹

脱炭素化社会と循環経済の同時達成が問われる昨今、リサイクルビジネスに求められる役割がこれまで以上に大きくなっている。足元では、中小零細企業中心の業界構造、汎用性の低いアプリケーションソフトの乱立、動脈側の商取引習慣に対する受け身の対応といった、日本の業界構造特有の事情もあいまってデジタル・トランスフォーメーション(以下、「DX」。)の促進は停滞している。

具体的には、紙媒体と電子媒体による二重管理、データ手入力に伴うミスの発生、属人的な業務管理による業務の非継続性、排出事業者毎に異なるASPサービスを使い分ける電子マニフェスト管理など、業界各社で一律に当てはまる課題も多い。こうした中、DX推進における課題は総じて、「攻め」と「守り」に大別できる。

まず、「攻め」のDXにおいては売上増大、新たな付加価値の創出、新商品・サービスの創出、ビジネスモデルの変革等を目的としたデジタル技術の活用等が求められている。例えば、センシングによる排出事業場の遠隔把握、ロボット選別、焼却施設の自動運転等の導入が必要となる。個社レベルでは、先進技術の導入を目指す実証事業への参画や設備導入の動きも進みつつある

一方、「守り」のDXは、コンプライアンス遵守、業務管理、ガバナンス強化等がその目的に位置付けられる。具体的には、処理業者許可情報、処理委託契約情報、マニフェスト情報といった廃棄物処理に係る基礎データの一体管理が挙げられる。現状、産廃処理業者許可情報は、環境省や都道府県政令市のウェブサイトで公開されているものの、品目情報等が不十分であり、リアルタイムに情報が更新されていない。本来は、行政が保有する処理業者許可情報を排出事業者、処理業者が活用できる形でオープンデータ化を行うことが望ましい。

民間側では、処理委託契約情報やマニフェスト情報等の基礎情報をデータベースとして備え、これらと許可情報とをデータ連携することで、従来人の手で行っていたコンプライアンス遵守のための管理業務を自動化・効率化することが可能となる。ここにこそ、「攻め」と「守り」を一体化したDX推進の切り口を見出すことが出来る。

許可情報・契約情報・マニフェスト情報を軸としたデータベースは、処理業者が主導する「資源循環プラットフォーム」として整備することが重要となる。従来繰り返してきた汎用性の低いアプリケーションソフトの乱立、排出事業者・動脈側のバラバラの商習慣に対する受け身の対応による処理業者の無駄な事務コストを解消するには、処理業者が主導した業界標準としてのデジタルプラットフォームを構築することが有効となる。

こうして「攻め」のDXの領域にフィードバックされる「守り」のデータ活用は、処理業者各社の競争領域ともなり得るが、「資源循環プラットフォーム」は各社が共通して業務コストを下げるという協調領域でもあるため、ひとたびプラットフォームが構築されれば、データベース上の情報を活用した業務である契約や支払請求、配車管理といった処理業者各社の基本業務アプリケーションとはAPI連携をするなどして、有機的な情報連携・情報活用も可能となるのだ。

すなわち、「守り」のDX推進をきっかけとして集積した産廃基礎情報を足掛かりに、処理業者に関する実用的な情報を拡充していくことで、動静脈が連携した資源循環の高度化にもつなげることができる。今こそ、業界横断的な「攻め」と「守り」の相乗効果を生むDX推進をきっかけとして、業界各社が連携しつつ、処理業者主導による「資源循環プラットフォーム」を構築すべきと言えよう。

 

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