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Column
コラム

連載タイトル:リサイクルビジネスのためのDX戦略講座

第7回:「デジタル異業種連携」について

 

資源循環システムズ株式会社

取締役 瀧屋 直樹

 

従来の天然資源の利用に依存した大量生産・消費・廃棄型の線形経済からサーキュラーエコノミー(以下CEという。)への移行というビジネスモデルの変革には、静脈産業の果たす役割が今後益々高まる。ただし、生活者のライフスタイル全体を通じたCEの確立には、業界の垣根を超えた「異業種連携」が不可欠である。更にデジタルの力を掛け合わせること、つまりDXによりCEを加速させることが必須となる。CE実現のための異業種連携においては、従来型の「動静脈連携」に加えてブロックチェーン、AI、センシング、デジタルプラットフォームといったイノベーションをもたらす「デジタルサービスプロバイダー」の存在が欠かせない。「動静脈連携」×「デジタル」を可能とする「CE型デジタル異業種連携」(以下、「デジタル異業種連携」。)がその実現に資するカギを握っている。

「デジタル異業種連携」の最大のメリットは、自社・自業種だけでは実施できない手段の選択が可能となり、飛躍的な課題解決につなげることができることである。①一企業のリソースを超えた、大きく魅力ある事業を創り出すことができる、②業界の垣根を超えて、本質的な社会問題を解決できる、③既存企業の膨大なリソースや信用を活かして、早期の事業立ち上げが可能になる、という3点の効果が期待できる。「デジタル異業種連携」は、既存ビジネスモデルの壁を乗り越える可能性を秘めている。

では、実際に「デジタル異業種連携」をどのように進めていくべきか。実践に伴うマネジメントポイントを以下に挙げる。一つ目は、理念・ビジョン・ゴールの共有である。成功する「デジタル異業種連携」には必ず関係者間での強烈な問題意識と理念、目的が存在する。この問題意識の高さに応じて、業種、価値観、立場が異なる人、組織を巻き込みやすくなる。異なる立場のプレーヤー達が議論をしながらプロジェクトに推進力を持たせるためには、常に立ち返る共通理念・ビジョン・ゴールの徹底的な共有が必要である。

二つ目のポイントは、パートナーシップの形成である。異業種連携に参加する各プレーヤーが互いの強みを発揮し、イノベーションを起こすには、お互いの企業規模等に囚われることのない対等なパートナーシップの下での双方向コミュニケーションが必要となる。異業種連携は「共創(コ・クリエイション)」であり、課題解決のために共に、新しい価値を生み出すことである。したがってフラットな視点で「共に解決していく」「共によりよいものを創り出していく」という経営姿勢が重要である。同じ課題へのアプローチでも、視点が異なる相手から提案されるソリューションは、自社内で想定できなかった内容が含まれているかもしれない。それぞれが自発的にリーダーシップを発揮し、参加者全員が各専門分野で新たな価値の創出のために動くことが理想形と言える。少なくとも、大手ITベンダーやコンサルティング会社に丸投げしてしまうことはあってはならない。

最後のポイントは、スピードある意思決定である。特に大手企業の弱点は、意思決定のスピードが遅く組織が固定的で柔軟性がないことである。これはどの業界の既存事業でも同じようなものである。だからこそ異業種連携は各個社の既存事業とは切り離した形で、ベンチャーのように自由度のあるプロジェクト運営をした方が成功確率は高まる。意思決定の遅延は、デジタル技術が常に陳腐化しつつ、目まぐるしく変化する社会経済状況の中でビジネスチャンスを逸することに直結する。

従来の線形経済から循環経済へと転換は、コストではなく新たな成長機会、ビジネスチャンスに他ならない。「デジタル異業種連携」により市場をリデザインすることで、パラダイムシフトを起こしていくべきである。

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