Column
コラム
連載タイトル:DXが加速するGX ―リサイクルビジネスの目線から―
第3回:「資源循環プラットフォーム」が果たし得る役割
資源循環システムズ株式会社
石田 翔一
本稿では、資源循環領域において官民関係者が構築を目指すべき共同利用型システム(以下、「資源循環プラットフォーム」)が果たすべき役割についての考察を行う。IT化の波に乗り遅れ、旧態依然たる廃棄物処理・リサイクル業界の現状に危機感を覚えている大手の処理事業者こそ、「資源循環プラットフォーム」を通じて、DX推進に向けた一歩を踏み出す必要がある。
まず、処理事業者目線から見ると、従来から排出事業者側の商慣習に対して受け身の姿勢となっていたために、複数のアプリケーションを使い分けながら対応し、それが業務の非効率性や非継続性のリスクをもたらしてきた。この状況を脱却するためには、大手処理事業者が連携して、協調領域として「処理事業者共通アプリケーション」を整備し、処理事業者自らが運用する形で、電子マニフェストや契約情報等の管理を行う。これにJWNETやさんぱいくんといった公共インフラを連動させることで、公的な処理事業者許可データを活用する仕組みを構築するべきである。
共通アプリケーションを通じて得られるデータは、処理事業者の基礎的データベース(以下、「処理事業者主導データベース」)に蓄積される。ただし、当該データベースへ格納する情報は、開示可能な協調領域に属するデータのみである。将来的には、詳細な顧客情報や取引情報等の競争領域を含む既存の個社アプリケーションとも密接なデータ連携を図ることで、広範な処理事業者情報を備えることができる。結果的に、処理事業者自らが主導して幅広い付加価値創出に資するデータを備え、業界のデファクトスタンダードとなっていくことが期待される。
これら「処理事業者共通アプリケーション」と「処理事業者主導データベース」を合わせた「資源循環プラットフォーム」が、JWNET、さんぱいくんと言った「官公プラットフォーム」と連携することにより、資源循環領域における官民連携サービスを実現し、業界全体のDX推進を図ることが可能となるのだ。
「資源循環プラットフォーム」の構築に当たって不可欠となるのが、処理事業者同士の連携である。廃棄物処理・リサイクル業界は中小企業が多く、先行投資で出資できる余裕のある企業は多くない。だからこそ、大手の処理事業者が協力してコンソーシアム形式の未来像を旗揚げすべきではないだろうか。「資源循環プラットフォーム」のメリットは、「処理事業者主導データベース」の共通財産化により、管理コストの削減ができることに加え、「処理事業者主導データベース」内の積極的なデータ活用にこそ見出せる。
これまで個社では入手が難しかった、もしくは入手できなかった業界のマニフェストデータや処理事業者情報など、全国的なマクロ情報の有効活用が実現できる。これらのメリットは、「資源循環プラットフォーム」への参加者が皆、企業の大小に関わらず享受されるものである。先行投資はできずとも、「資源循環プラットフォーム」が構築されメリットが可視化されれば、参入する企業は増えるであろう。
「資源循環プラットフォーム」は、参入企業が多ければ多いほど幅広い情報をプールできることになるため、誰にとっても参入するメリットは大きい。業界全体の協業による「資源循環プラットフォーム」の構築こそが、静脈産業主導による資源循環の推進につながり、ひいては官民関係者全体のGXの加速につながるのではないだろうか。
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